2 15, 2007

酔いがまわったアタマに絵がささやく

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すこし前に、札幌Patagoniaが古い石の蔵を上手に改造してアウトドアクローズのショップとして営業しているとレポートいたしましたが、その折チョット触れた東京の石蔵造りのお店がココ。
港区三田5丁目「アダン」(お隣の目黒区にも三田という町名があるのでご注意を)。
こちらは店舗ではなく、沖縄というか南国というか環太平洋というか、そんなユルい空気が流れている飲み屋。
地下鉄やJRの駅からも遠く、陸の孤島のようなロケーションなのに、なにをやっているのかサッパリ分からないような人たちでいつもいっぱいなのは、ひとえに店主のプロデュース感覚がちゃんと先頭を走っているからかも知れないなー、な~んて泡盛「八重泉」のロックを飲みながら想像したりもするのですが。

で、本題。
お店の正面のレンガ壁に掛けられているこの大作。
どこかジョージア・オキーフやら田中一村やらを思い起こさせる絵なんですが、何時間見ていてもぜんぜん飽きない。
しかも、このお店のコンセプトと見事に符号している。
田中一村には「アダン」と銘うたれた沖縄の海岸を描いた作品がありますが、右下に見える海や砂浜のあり様は、まさに一村の沖縄。
こぼれんばかりの純白のオーキッド?とまだ硬く閉じている意味ありげなこれまた大きなつぼみも、温帯性気候ならではのおおらかさ。
ちゃんとした絵の1枚もない飲み屋が多いなかで、お店に絵を飾るということ自体評価したいし、なによりも絵の選球眼がいい。
いつもチャコールグレーのスーツに身を包んで肩こりに悩まされている人たちへ、この絵は何かをささやいているよーな気もするし。

画家は宮永リサ、という人。
店主が手に入れた彼女のほかの絵も見せてもらったが、感覚的な作品も描いている。
今後が楽しみだなー。

この絵は南青山の根津美術館近くにある「タヒチ」という亜熱帯の海岸小屋みたいな飲み屋に開店当初は掛けられていたのですが、いつの間にか三田5丁目へ引っ越してきた。
いい絵は旅をするんですかねー。

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5 18, 2005

消えゆく昭和を取りもどす

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「思わぬ発見」というのが、徘徊する者に与えられた数少ない特権でして。

神田淡路町の裏通りを歩いていたら、いまどき赤い提灯をつり下げた居酒屋が。
提灯には「どぜう」の文字。
歳月の経過をはっきりと伝えるブリキを貼った緑色の壁も、なんだか懐かしく。
看板を見れば、「みますや」とある。

縄のれんを分けて、なかに入ると、これまたバック・トゥ・ザ・ショーワという雰囲気。
やや過剰ともいえる「むかしの感じ」が充満していて、圧倒される。
すすで黒く染まった神棚。
黒い板に書かれた品書きの数の多さ。
小上がりに通されて、広い店内を見回せば、なんとキリンとアサヒから贈られた「祝 創業100年」の立派な花かご。
じつに、昭和どころじゃなかったのだ。

神田の変貌ぶりをなげく声をよく耳にするが、こうして裏通りにまわってみれば、こんなお店もまだまだ健在。
そして、なによりうれしいのは、町名がいまも変わらないで続いていること。
神田鍛冶町、神田紺屋町、神田錦町、神田練塀町、神田佐久間河岸、神田駿河台・・・・など、神田がアタマにつく町だけでも、26。
さらには、外神田、内神田、東神田、西神田まで、控えている。

これには、地元の人たちのわが町に対する愛情の深さと自負を感じないわけにはゆかない。
そういう気持ちがあればこそ、こうしたお店も長生きできようというもの。

谷底にあっていつも霞が立ちこめていたことから「霞町(かすみちょう)」と、花にも似た優雅な響きの名前を与えられていた町も、とうのむかしに「西麻布」に。
名前が変われば、空気も変わる。
いま、むかしの面影を探そうとすれば、浅田次郎の小説に頼るしかない、といった状況。

神田のみなさん、がんばりましょうね。

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2 28, 2005

サヴィニャックで肩の力をぬいてみる

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なにも掛かっていない部屋の壁に、絵を飾りたい。
印刷されたポスターや名画ならいろんなところで売られているが、クオリティ的にイマイチ。
かといって、オリジナルの絵を買うほど、余裕もない。
こんなときに、この人の名前を知っていると・・・・。

レイモンド・サヴィニャック。
ほのぼのとしたタッチでイラストレーションを描く1907年生まれのフランス人作家。
エア・フランスや石鹸会社、自動車会社などひと昔まえの広告ポスターが有名だが、どれを見てもいまの時代のような激しい企業競争を感じさせないのどかさが画面いっぱいに広がっている(写真中央のポスターも)。
以前からグラフィックデザイン関係の学生さんに知られたビッグネームだが、いまや若い人たちの間でも知名度は結構高くなっている、そうな。

この作家のポスターをたくさん置いてある店が代官山から並木橋に抜ける通りにある。
KIYA GALLERY。
1976年開店、アールデコ関連の商品を主軸に、ラリックのガラスや50年代、60年代の家具なども。
ポスターはサヴィニャック以外にも、師匠であるカッサンドル(NORMANDIE号という豪華客船のポスターで有名)やヴィルモなど。

この手のポスターはすべてリトグラフ(石版画)。
しかも、当時刷られたものばかり。
その分、少しばかり値がはるのは仕方がないとして、インクをたっぷりと吸った重量感ある石版刷りのポスターなら、殺風景な部屋もチョットは見栄えがよくなろうというもの。

なにを隠そう、私もなにか面白い絵がないかなと探しているうちに、サヴィニャック作ではないものの、ロワール河流域への旅へと誘うフランス国鉄の木版画のようなポスターに目が止まって、気がついたときにはクレジットカードを引っぱり出していたという、思わぬ展開。
「出会いは突然訪れる」んだなー、コレが。

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11 26, 2004

晴れた日にはこういうところでビールを

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昨日の続き。
といっても、東京国際フォーラムに入っているレストランのお話。

有楽町駅前にあった古い3階建てのビア&レストラン「レバンテ」が、フォーラムAブロック2階へ移っていたとは知りませんでした。
以前の建物はまだ残っているものの、周辺一帯の再開発でちかぢか取り壊される運命に。
でも、転居先のロケーションはご覧のようにグリーンに囲まれ、以前とはうって変わって清清しく。

昭和22年の創業。
ビア&レストランでも古参の部類。
松本清張の「点と線」にも、「じゃぁ、三時半、有楽町のレバンテで」というセリフがあるらしく、いまでも「昭和」と伴走してきた雰囲気がメニューや内装にチラリと。
もちろん、売りものだった「的矢カキ」は、こちらでも健在。
ホテル・オークラ系というのも、安心材料。

生ガキのシーズン。
有楽町で逢いましょうか。

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9 11, 2004

ケーキだって芸術したい

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よーやく涼しくなって、ソフトクリームが2番手に下がり、ケーキがトップの座をうかがう季節がやってきました。

青山通り、骨董通り入口にあるカフェ・コムサ。
アパレルメーカーが全国で展開しているこのカフェの「売り」は、季節のフルーツを惜しげもなく大盤振る舞いしたパイやタルト。
ご覧のように、リオのカーニバルから抜け出してきたような色とりどりの美女たちが飾り窓の向こうから呼んでいる。

で、誘惑に負けて、いちじくと巨峰が山盛りになった「オータム・タルト」を指名。
クリームの強さが果物の味を消しているケーキが多いなかで、久しぶりにいちじくの野性の甘味を再確認したのでした。

★当方の設定ミスでコメントやトラックバックができない状態が続いておりましたが、今回ようやく不具合を発見、修正いたしました。
お気軽にコメント、トラックバックを。

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8 18, 2004

フランスで美術館めぐりをする前に

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銀座7丁目、メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス。
フランスの美術館にあるミュージアム・グッズが置いてあると聞いて、行ってきました。

はるばる異国の美術館を訪れても、絵を見る前にミュージアム・ショップへ小走り。
こんな人、あなたのまわりにいませんか。
きっと何かお土産を買っておかないと、行った証拠が残らないような、不安な感じなんでしょうね。

このお店で、またまた青いカバに遭遇。
以前見たのはNYのメトロポリタン博物館だったけれど、ルーブルにも青いカバがいたんですね。
同じものかと思ったら、カラダに書き込まれた模様なんかが微妙に違っているらしく。
氾濫するナイルの象徴であるカバを青く塗ることで神々の怒りを鎮めるために作られた、いってみれば埴輪のような存在だったみたい。
ちなみにメトロポリタンではウィリアムって名前だけど、ルーブルでは何?と聞いたが、特段ニックネームはないらしい。
とすれば、ニックネームをつけるのって、アメリカ人だけの得意技か。
いまフロリダで暴れているのは、ハリケーン=チャーリーだし。

地下1階ではフランス国内の美術館情報を手に入れることができる、とか。
このお店は大日本印刷がスポンサーだが、企業もこのくらい余裕をもつと大きく見えるよね。

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8 09, 2004

冷たいリモンチェッロで夏のアドリア海へ

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コーヒーチェーン店 Segafredo Zanetti(セガフレード・ザネッテイ)。
その名の通り、イタリア系。
向こうじゃあまり見かけなかったような気もするが、サンジミニャーノにあったとの証言もあり。
日本での店舗展開は東京周辺のみ、とか。
一見スターバックスやタリーズと変わらない感じのコーヒーショップだけれど、うれしいことにイタリア系のアルコール類をちゃーんと用意してくれているバールでもある。
でも、もっとうれしいのは、そのお値段。

写真手前はキリキリに冷やしたLimoncello(リモンチェッロ)290円。
ホワイトリカーのなかに砂糖とレモンの皮を大量にただ沈めただけという芸のない飲み物だが、税込みでこの料金なら文句は言えまい。
写真奥はイタリアではどこにでもあるビール Nastro Azzurro(ナストロアズーロ)470円。
このほかGrappa(グラッパ)150円、Calvados(カルバドス)150円なんて聞くと、きょうは1,000円でいけるところまでいってみるか、とつい思ってしまうほど。

夏場は夕方5時からハッピーアワーになっていて、さらにお得になっている。
アジアカップも終わっちゃったし、また近所のセガフレードで蝉の声を聞きながら日が暮れてゆくのを楽しもーかな。

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8 06, 2004

歳をとったらこういう店で飲みたい

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湯島天神近く、「シンスケ」。
大田和彦など居酒屋バイブル本にはかならず登場するこのお店の開店は、5時。
仕事もそこそこに駆けつけても、「すみません、イッパイで・・・」となること、たびたび。

ここはなんといっても、客がいい(ヘンなほめかたですが)。
もちろん、日本酒に対する筋の通しかたとか、料理一品一品の純朴さがあるからこそ、こうして客が集まってくるのだが、情報誌片手のミーハーも、集団で気勢をあげる手合いも、皆無。
店の主人がいばっている居酒屋なんかをありがたがったりする変わった人も世の中にはいるらしいが、ここはその対極。
ただひたすら酒(というか、ひととき)を楽しんでいるオトナばかり。

「ブランドは顧客がつくる」。

お店の名刺には、マンガっぽいオヤジさんの絵。
きけば、以前カウンターに席をとった女性が箸袋にササッと描いたもの。
それがみごとに特徴をとらえていたんで使わせてもらった、とか。
1階はその絵の通りねじり鉢巻をしたオヤジさんと息子が切りもりしているが、いい客が来るように店を維持してゆくのって、雑誌のアートディレクターやブランドマネージャーと同じように「つよさ」が必要なんだろーなー。

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7 21, 2004

ただしい猛暑の過ごしかた

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やはり、夏はどじょうでしょ。
というわけで、浅草は「駒形どぜう」へ。

大手町で39.5度を記録した昨日に比べれば、まだ過ごしやすいほうだったけれど、東京にはめずらしいフェーン現象とやらで、道行くサラリーマン諸氏の表情も険しく。
こんな暑い日に炭火の熱も伝わってこようという鍋でもないでしょ、と思いがちだが、どっこい。
暑いときこそ、ウチワをパタパタさせながら、ビールグラス片手に丸どじょうをつつくのがいいんです。
6時にお店に入ったら、もうほとんど満席状態。
この季節、どじょうが産卵期でうまいことをみんな知ってるんだなー。

最近は天然ものが少なくなっちゃって、養殖ものと混ぜてお出ししているんです、天然ものはカタが揃わないので、それだけでお出しするというワケにはいかないんです、とはお店の人。
言っていることが、正直です。

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7 19, 2004

さよなら、青山ブックセンター

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残念だなー。
芸術、デザイン、建築、映画、音楽など、ほかの本屋にはないアート系のキャラクターで気持ちのいいお店の空気を作っていた青山ブックセンターが閉店しちゃうなんて。
18日に六本木店に行ってみたら、すでに閉店の張り紙。
でも、広尾店はなぜか19日いっぱいやっていました。

カウンターではお客さんたちがお金を払いながら口々に「淋しくなるわよねー」とか「せっかく楽しみにしていた店なのに・・・」とか。
そのたびに店員さんも半泣き。

ロシア製のカメラとかTシャツとかが置いてあったり、駅ビルに入っているような全国展開型の書店とは違って、本のセレクションも個性的で良かったのに、つぶれちゃうなんて。
これがワルい教訓となって、全国のどの本屋へ行っても、金太郎飴みたいに同じ本しか手に取ることができなくなるような状況にならないことを祈るばかり。

ロバート・ハリスの本に、若い頃オーストラリアへ行って気まぐれに自分の好きな本だけを集めたお店を開いた話が載っていたけれど、日本ではなぜこういう芽が育たないんでしょうね。

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7 03, 2004

精神世界をワンディ・トリップする

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70年代後半から80年代。
まだ日本にもヒッピームーブメントやフラワーチルドレンの残り香が漂っていた頃、青山の裏通りにニューエイジ系の精神世界専門書店があって、何回か訪れたことのある「ブッククラブ回」。
ロスアンジェルスの住宅地にも髪の毛を後ろに束ね、マリファナの絵をあしらったTシャツ姿の店員がものうげに本を読んでいるスピリチャル系本屋があって、バンブーの風鈴やインドのお香などが置いてあった、そのまんまの空気が青山のそのお店にも流れていたのですが、思い出して何回か行ったけれど、見当たらない。

ご時世ですか、と諦めていたのですが、調べてみたら、その近くのビルの地下で営業しているではないか。
うれしいですね、むしろ以前より出世して、書籍の数も増えている。
聞けば、5年前にこちらに移ってきたとのこと。

むかしはトランスパーソナルなどの心理学、ヨガやアレクサンダー・テクニーク、シュタイナー、カルロス・カスタネダ、ジェームス・ラブロック、コリン・ウィルソン、フリッチョフ・カプラ、アンドルー・ワイル、ジョン・リリーなどの領域をカバーしていたのですが、いまやジャンルはさらに広く。
目だったところでは、性、うつ、子供など、いままであまり表に出てこなかった領域の本が出てきた一方で、心理学の世界もNLPや催眠療法など、さらに専門化が進んでいるような。
「カテゴリーは細分化する」というマーケティングの法則は、やはりここでも生きている。

本棚を見ていたら、面白そうな題名の本が。
野口晴哉「風邪の効用」(全生社)。
奥付を見たら、昭和37年初版、平成14年25版、と堂々とロングセラーとなっている1冊。
風邪は必要があって、風邪をひくようになっている、と。
風邪をひかなくなったら、その人はアブナイ、とも。
「常識を疑え!」ですね。


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5 18, 2004

再開発ばかりじゃ窒息しちゃう

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三田の慶応大学正門、その左手の三角州のような場所の一角。
ちょうどイタリア大使館へ抜ける坂道に入ったところ。

津国屋(つのくにや)。

明治26年、1階を酒屋店舗として生まれたこの家をを改装して居酒屋にしたのが3年前。
じつはこの建物の隣には蔵もあったのだが、昭和46年に取り壊しちゃったとか。
うーん、惜しい。
それでも、母屋をこうして現役としてきれいに使っているのだから、アタマが下がります。
客層は湯島「しんすけ」より若い感じがするものの、駅前居酒屋にありがちな愚痴や嬌声とは無縁の落ち着き。
お酒はもともと酒屋だけあって、いろいろ選べる。
しかも、どれも安いときている。

改装もメンテナンスも想像以上に負担だったとは昭和22年生まれのご主人、伊藤さんの弁。
そうだろうーなー、車だってちょっと古い年代の愛車をなんとか手元においておこうとすると、これがとんでもない金食い虫になったりして。
新しい車のほうが速い、安全、ランニングコストもだんぜん安い。
そろそろ替えたら?
合理主義者の反論しにくい提案に、たいていは白旗をあげることになる。

でもね、むかしの記憶をつないでくれる場所をいつでも目にすることができるのは、ありがたいんですよ。
メンテも大変でしょうが、応援してます。

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3 30, 2004

ほんとうにおいしいと言葉はでない

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金沢市内も20度と春の陽気。
例年より10日も早い開花ということで、桜も七分咲き。
その金沢にホテルの1階で店を構えるお寿司屋さんにお邪魔しました。
3月24日で73歳を迎えたというご主人森田一夫さんの技とセンスは、形容する言葉がすべて陳腐になってしまうようなレベル。
私の連れなんか、出された寿司を頬張るたびに、うつむいたまま言葉も出ない。
「うまい」とか「まいった」とか体全体でコミュニケーションしても、その旨さの10分の1も表現できない。
こんな寿司屋って、東京にあっただろうか。
今日もお昼だというのに来ているお客さんは、一組が福岡から、もう一組は宝塚から。
この客観的事実だけでもその水準の高さが分かろうというもの。
そういえば、昨秋伺ったときは京都の老舗の割烹から偵察隊が来ていたなぁ。

まな板がお客の目線の高さにしつらえられて、職人の手さばきがすべて見えてしまう珍しい構え。
そんなところにも、ご主人の自信と覚悟がうかがえるわけですが。
しかも味だけじゃなく、作る姿にリズム感がある。
「包丁は迷ったら、だめなんです」。

7年前、小松空港近くにあって東京の財界人などが出入りしているような繁盛しているお店を畳んで1年間何もやらなかった。
毎日散歩したり、旅行に行ったりしていたけれど、そのうち 魚屋や寿司屋の前を通ると体がムズムズしてきて。
そして今はこの店で自分が気に入ったように自分が楽しくやらせてもらってます、とご主人。

「いつぞやは杖をついたお年寄りが来たのですが、帰りに杖を忘れて帰られてしまった」。
こんな話にも納得がゆく食後の満ち足りた感覚。
私のような小僧には想像もつかない波乱に満ちた人生航路だったように聞いていますが、顔色もよくお元気。
一方で、まだまだ道なかば、という謙虚さ。
ここにも生きるお手本が、ひとつありました。

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3 10, 2004

生涯一バーテンダーという生きかた

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用あって北海道へ。
先月末、京都で80年の歴史のあるバーにお邪魔したとき「クールの古川さんとこも閉めはられたし、あとは札幌の山崎さんのところぐらいかしら」との話があり。
たまたま札幌へ行く機会があったので、時間を見つけてそのお店に飛び込みました。

こちらは当地では有名で、雑誌や観光ガイドでよく目にするお店なのですが、私は初めて。
で、この方が当年83歳のマスター、山崎さん。
東京は小石川生まれだそうで昭和20年東京會舘に入社。
28歳で札幌へ出向き、33年BARやまざきを開店、以来46年生涯一バーテンダーという経歴。
53度とアルコール度数も半端じゃない樽に入ったBOWMOREをロックでいただきながら、コースターの裏に必死に書きとめたのが上記の歴史でした。

京都の場合は家族3代で80年。
ここは山崎さん一代で46年。
でも、山崎さんは若い人をたくさん育てたらしく、このすすきののお店のまわりにいっぱい弟子たちの店があるんですよ、とやはりタータンチェックのベストを着込んだ勉強中?のバーテンさんが説明してくれました。
すこし耳が遠くなられたのか、補聴器を頼りにされているようでしたが、山崎さんをアシストするように若いかたが動いている様子がうかがえて、うれしかったなぁ。

そういえば、数寄屋橋SONYビル裏手に「お多幸」という東京では有名なおでん屋があるのですが、そのむかし、店に入ったすぐのところに太い筆で「ばあさんは耳が遠いので大きな声で注文してください」と店主が大書した張り紙が掲げてあったことを想い出しました。
「あー、オレ、大根に昆布にシラタキ、あとは豆腐」。
声のボリュームを適度に上げて注文するんです。
その当時は気がつかなかったけれど、いま思えばこの店だってチャンとお年寄りをケアしてあげていたんですね。


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2 26, 2004

ずーっと続けておくれやす

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仕事で京都へ。
で、これ幸いと「京都にすごいお店がある」と以前バー業界の権威から話に聞いていた老舗に伺いました。
場所は一力の前、祇園の一等地。
ただし、入口には小さく「会員制」のプレート。
誰かの紹介でもなければ入れてくれない「いちげんさんおことわり」のお店なのですが、今回はちゃっかり根回しをしておいたので、ノープロブレム。
何がすごいかって?
なんと80数年におよぶ歴史あるバーだったんです。
暗い写真で申し訳ありませんが、着物姿の中川さんのおじいちゃんはその昔京都ホテルでバーテンダーをされていて、大正年間にここへ店を構えられたとか。
以来、3代続いてこの店を守っているとのお話で、柱も壁も飴色にくすんで古色蒼然。
カウンター後ろの棚には終戦直後に手に入れたであろうGORDONとかBOLSなんかのラベルが変色しちゃったボトルもズラリ。

そういえば、ということで、やはり長い歴史をもつ尾道「あかつき」の話を持ち出したところ、銀座「クール」も昨年11月にとうとうお店をお閉めになったとの話。
知りませんでした。
お店を維持するのはたいへんな労力が必要とは思うものの、歳月に耐えてきたバーが姿を消してゆくのは残念だなー、なんて思って飲んでいたら、どーも酔えなくて。
これも京都の底力かも知れませんね。


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2 13, 2004

これが好きな世界なんだもの

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渋谷と西麻布にはさまれた日赤商店街という、ほとんど陸の孤島みたいなところに、なぜかホットにして神戸っぽいスコッチバーがあるんですね。
それもシングルモルト・メイン。
なおかつアイレー(アイラ)からハイランドまで、70年前後からびっしり。
ふつうの人ならタクシーしか利用できないような場所にこんな店は作らないと思うのですが、この「ヘルムズデール」の村澤さんはさすが。
九州など遠いところからもこの店を訪ねてファンがやってくるオーソリティとは、うかつにもまったく知りませんでした。
じつは日本在住シングルモルト教の巡礼地だんたんですね。
日本版、ルルドの泉、シングルモルト編。

きょうもラフロイグのスペシャルバージョンをいただいたのですが、銀座でどこぞの酒かわからない薄い水割りなんかを飲まされるよりは、よっぽど「この歳まで生きててよかった」感じがします。
まあ、とにかく棚に並んだボトルたちの血縁関係の広さをご覧あれ。
まだ歳の若い主人の思い入れの深さ、それに伴ういい意味での頑固さ、そしてかの地に対する愛情の深さも想像されようというもの。
こんな店がなければ、東京の夜も面白くない。
「アート」ってキャンバスに描かれたものだけじゃない、これは愛すべき一例。

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1 27, 2004

いい味だしてるのは料理だけじゃなく

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恵比寿にはいいお店が多いですね。
さる焼酎専門店の若いオーナーは「恵比寿は競い合うから、さらにレベルが上がるんです」と言ってました。
ご覧いただいているお店は、恵比寿駅から3分程度のところにあって、シングルモルト、ワイン、ポートなど珍しいやつやオークションものなんかをひっそりと隠し持ってる実力派。
カウンターと椅子席合わせて10人程度しか入れない喫茶店風の店構えですが、店主もいまどき珍しいくらいの粋な人で。
なおかつ、短時間で作ってくれる料理も有名シェフがやっているお高いレストランよりはるか上をゆく感じ。
この間、出していただいた牛の頬肉のワイン煮込み。
あの味は脳の奥深く大脳辺縁系にしっかりと刻み込まれました。
こういう店があるから、人生楽しくなるんだよね。感謝です。

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