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1 30, 2009

まわりから手仕事が消えてゆく

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昨年来、パナソニック汐留ミュージアムをはじめとして「アーツ&クラフツ」関連の催しが各所で散見され、気になっておりましたが、これが真打?
上野の東京都美術館「生活と芸術―アーツ&クラフツ展」。

会場入口の最初の説明文を読んで、おどろきました。
「1840年頃、英国では工業生産と無規制な商業がもたらす深刻な弊害が認識され、政府はデザイン政策を講じて品質の向上を図ろうとした」。
目を疑ったのは、後段「政府はデザイン政策を云々」のくだり。
こんな時代からイギリスでは政治家や役人が「デザイン」に価値を認めていたんですね。
ひるがえって、わが国では首相がアニメ・マンガ好きというひさかたぶりの「文化理解型」の登場でなんらかの変化もと期待されはしたのだが、ご存知のようにとてもそれどころじゃなく。
小説家でもあり美術愛好者でもあったアンドレ・マルローが、ド・ゴール政権下で文化相を務め、美術交流を深めたようなことは、この国ではまだ100年早いってことでしょうか。

と、嘆いてばかりはいられない。
アーツ&クラフツは、上記のように産業革命以降労働する喜びが失われてきたことに対して、ウィリアム・モリス(William Morris 1834年~1896年)などが「理想とする労働と休暇、芸術と生活の完璧な均衡」を目指し、手仕事やクラフトマンシップの価値を高めていったムーヴメント。
そして、この運動がイギリスを起点としてフランス、ドイツ、オーストリア、そしてはるか日本まで理解者を獲得してゆく。
その過程を実際の作品を見ながら概観しようというのが、この展覧会なんですね。
会場には花や植物、鳥など自然をモチーフとしたテキスタイル、壁紙、食器、椅子やクロゼットなどの家具、ステンドグラス、タピストリーなどが展示され、当時の部屋もそれらしく再現されている。

日本の作品を紹介するコーナーは柳宗悦、河井寛次郎、黒田辰秋、濱田庄司、芹沢銈介、棟方志功、バーナード・リーチなどおなじみの面々がその主役で、全般的には駒場の日本民藝館にあるような品々が集められておりました。
そういうものを横目で見ながら歩いていて、ふと思い出されたのが、旧岩崎庭園洋館(ジョサイア・コンドル作 1896年竣工)の厚い和紙で作られた壁紙(金唐革紙)。
おそらくはアーツ&クラフツの影響ありと思わせるできばえで、明治の時代には生活のさまざまな場面にそのチカラが及んでいたのではないか、と推測されるのだが。
宮澤賢治(1896年~1933年)も、モリスの著書「民衆の芸術」に呼応して「農民芸術概論」を書いたと聞く。

そういえば、フランク・ロイド・ライト(1867年~1959年)がデザインした椅子(旧帝国ホテル用など)や電気スタンドなども、自然界からヒントを得て作ったものだが、今回の展覧会ではオーストリアのコーナーでそれとかなり近しい、というか親戚関係にあるような作品も発見。

アーツ&クラフツ運動当時よりさらに進んで、いまや工業製品や大量生産品に完全包囲され、家のなかを見回しても手作りと言えるものがなくなってしまったのが、いま私たちが生きている時代の様相(手作りの料理が恋しい)。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」の時代まで、あと一歩か。
言っとくけど、そんな未来なら、オレは行きたかぁないゾ。

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