苦しいときのサン・テグジュペリ頼み
みなさま、あけましておめでとうございます。
新春早々、不景気なハナシで申し訳ありませんが。
本日の日経新聞に民間エコノミスト17人に今後の景気動向を占ってもらうという記事が出ておりましたが、「景気回復を実感できるのはいつ?」という質問には「2012年」という回答が最多となっておりました。
日ごろからエコノミストやアナリストといった人たちの予測能力は「新宿の母(占い師)」を超えることはないと思っている当方も、すくなくとも本年が「ガマンの年」であることは街を歩いていれば十分認識できるところでありまして。
じつは当方、毎晩犬の散歩をかねて小1時間ほど、やれ恵比寿だ、麻布十番だ、青山だ、と徘徊しておるわけですが、昨年末はある居酒屋の前を通るときまってその従業員らしき中年男性から手作りのチラシを渡され、「よろしくお願いします」と頭を下げられ。
そのうちに「ウチの店は犬もOKですから」と寒風吹きすさぶなかで懇願される始末。
犬がウロウロしてるような居酒屋はなんだかなー、と思いつつも、その崖っぷち感が痛いほど突き刺さってきた年の瀬でありました。
あの店は、あの従業員は、無事越年できたのかなー。
ところで、写真を見てください。
当方の本棚にあるのは、自ら操縦する飛行機が不時着して、失意の真っ只中にいる一人の男のモノクロ写真。
場所はリビア砂漠。
プロペラは無残にひしゃげ、機体には火災が発生したと思われる焼け焦げが。
男は救援機が自分を探してくれるのを不安げに待っているようにも見える。
(砂漠に不時着した先輩パイロットの何人かは部族民に虐殺されている)
その男の名前、サン・テグジュぺリ(Antoine de Saint-Exupery)。
おそらくは軍人としてではなく、郵便飛行士として操縦桿を握っていた頃であると思われるが、「人間の大地 TERRE DES HOMMES」(みすず書房:サン=テグジュペリ・コレクション3)の中扉でこの写真に出会ったとき、不思議に勇気づけられたような気がしたものでした。
だって、もしもこんな壊滅的な状況が訪れたら、誰だって「もう二度と飛行機に乗らない」か、もう二度と立ち上がれない、って方向へ進んじゃうじゃない。
でもサン・テグジュぺリは飛びつづけた。
飛行機から見える大地を愛し、激変する天候と戦い、そのなかで地球や自然・生命を思索し・・・・。
軍隊に入り、P38ライトニングで地中海を偵察飛行中に消息不明になるまで。
だから、サン・テグジュぺリにとっては不名誉な不時着証拠写真も、当方にとってはなにかのときに大いにチカラになってくれる貴重な存在であるわけです。
多少苦しくなっても、この写真の主に比べれば・・・・。
「苦しい」ついでに。
フルマラソンのランナーとしても知られる村上春樹のランニング記録「走ることについて語るときに僕の語ること」(文芸春秋:村上春樹風に言えば「僕はこの本の名前を正確に言えたためしが一度もない、どうしてこんなストレートな翻訳調の書名をつけちゃったんだろう、やれやれ」といったところでしょうか)には、こんなずっしりとした言葉が紹介されている。
Pain is inevitable.Suffering is optional.(痛みは不可避だが、苦しみはこちら次第)。
つまり、足を襲う痛みがあれば走り続けることはできないが、苦しくなったとき走るのをやめてしまうかどうかは、ひとえにその人の選択にかかっているのだ、と。
たしかに。
2010年、苦しい時間帯はまだまだ続く。
でも、なんとか生き延びましょうよ。
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